問題視されるヘッジファンドのレバレッジ取引とは?

ヘッジファンド hedgefund

ヘッジファンドは、ハイレバレッジな取引ばかりを行い、金融市場に無駄な緊張を与える存在であると思われがちですが、それは本当なのでしょうか?

そもそもレバレッジとは何かについて言及しつつ、ヘッジファンドとレバレッジの関係性について解説していきたいと思います。

レバレッジは古くは江戸時代から行われてきた手法

レバレッジ自体は、決して最近登場した危険な投資方法というわけではありません。実は、古くは江戸時代から行われてきた由緒ある手法なのです。

そもそもレバレッジとは、経済活動において他人の資本を用いることで自己資本に対する利益率を高めることをいいます。

これは、江戸時代に盛んに行われていた米の先物取引においても用いられてきました。

その流れは明治以降に整備された11の株式取引所にも受け継がれ、日本ではむしろレバレッジによる商いが定着していた土壌だということができます。

戦後GHQは先物取引を禁止し、代わりにアメリカ式の信用取引制度が導入されることとなりました。

朝鮮動乱による好景気も手伝って個人投資家の資金が信用制度をどんどん通じて流れ込み、株式市場は一挙に活性化した。

高度経済成長とともに機関投資家が増えたことによって信用取引の利用率は徐々に低下傾向にありましたが、近年になってネットによる取引の定着が再び信用取引を利用する個人投資家を増やすことになってきました。

今や、レバレッジ取引はある種トレンドと言っても過言ではないでしょう。

そして、長年停滞状態にあった日本の経済状況を、レバレッジ取引が再燃させるかもしれません。

そもそも信用取引とはどういうものなのか

ヘッジファンド

投資家は自己資金が不足していても、証券会社や金融機関から資金や株券を借りて株を売買することができます。

ただし、その代わりに一定の資金を証券会社に差し入れなければなりません。その賃金のことを、委託保証金といいます。

また、賃金ではなく株券を差し入れる場合は代用有価証券といい、掛目は通常8割となっています。

信用取引におけるリスクとは?

信用取引を売買した後に株価が下がってしまった場合は、追加保証金(追証)を差し入れなければなりません。

この追証が払えない場合、取引は自動的に決済となります。

また、保証金以上に株価が下がった場合、その差額は証券会社への借金となってしまいます。

レバレッジは少ない資金でもお金を借りて大きなリターンを期待することができますが、その反面、お金を借りている分だけ失敗したときのリスクは大きくなります。時には借金を背負いかねないということをしっかりと念頭に置いてください。

そんなハイリスクハイリターンなレバレッジ取引ですが、投資銀行やヘッジファンドでは、通常の信用取引の委託保証金率とは一桁違うレバレッジ比率が認められています。

すべてのヘッジファンドがハイレバレッジでの取引を行っているわけではありませんが、ハイレバレッジ取引によって何年も結果を出し続けている敏腕ファンドマネージャーが在籍しているようなファンドも実際に存在します。

ただ、一度でも失敗してしまったときの損失額はすさまじいものがあり、ヘッジファンド=ハイレバレッジ=危ない存在という偏見が生まれてしまったのもそういった背景にあると考えられます。

ハイレバレッジ取引で隆盛を誇ったLTCMの経営破綻について

ハイレバレッジ取引による失敗は、1994年、ソロモンブラザースでバイス・チェアマンまで昇りつめたジョン・メリウェザーが立ち上げた「ロング・ターム・キャピタル・マネジメント(LTCM)」の経営破綻が挙げられます。

LTCMでは、収益率が2.5%程度のアノマリーに対して20倍近いハイレバレッジをかけて42.8%まで増幅させていました。

優秀な人材が集まっていたこともあり、ハイレバレッジ取引におけるリスクヘッジも完璧こなせていると誰もが認めるところでした。

しかし、1998年に経済危機に陥っていたロシアが突然国債の償還不能発表したことにより、LTCMのすべての計画が崩れ去ることになったのです。

想定外の事態にLTCMはあっという間に破綻してしまいました。

このLTCMの例があまりにショッキングだったことから、ヘッジファンドは怖いと感じる人が増えたのですが、これはあくまで一例にすぎません。木を見て森を見ずといいましょうか、ひとつの事例だけを見て「ヘッジファンドはこういうものである」と決めつけるのはよくないことだと考えます。

事実、平均的なヘッジファンドのレバレッジ比率はおよそ2倍前後でしかありません。

現在では、レバレッジを一切かけることのない投資信託よりも保守的なヘッジファンドも生まれていますが、本質はそこではありません。

大切なことは、「レバレッジを多用しているから怖い」という感覚を捨てて、「リスクとリターンの観点から適切なレバレッジで取引をしているかどうか」を考えていくことではないでしょうか。